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技術計算:化学工学

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 ここでは、学問としての「化学工学」全般についての話題を提供します。化学工学全般といっても 「反応工学」は除き、単位操作などの装置設計に関わる一般的な話をします。
 反応器の設計や「反応工学」についての話は別のページで紹介しています。

 「化学工学」という学問分野には、装置材料などを扱う分野、制御・自動制御を扱う分野、センサーや工業分析に 関わる分野、プラントの運転の分野などが含まれることもありますが、わたし自身こうした分野は専門外ですので ここでは割愛します。
 こうした分野は他の学問との境界領域に該当し、「化学工学」と「よその学問」とどちらの比重が大きいか小さいか で、学問としての分類(所属)が決まってきます。

 以下取り上げる分野でも、計算機を利用したシミュレーションに関する話題を重点的に提供したい。

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化学工学との出会い

 筆者がまだ大学生(1970年代半ば)のころ、専門課程で「化学工学概論」という授業で始めて化学工学に接した。 授業の一番最初に、次元解析というので、MLT(Mass, Length, Time)の話を聴いたのを鮮明に覚えている。そのときの先生が、 大学、大学院を通じての指導教官であった。
 その後、授業で「化学工学Ⅰ」、「化学工学Ⅱ」とか「化学工学実験」などという授業があった。
 大学4年生のとき、研究室に配属になるのだが、化学工学研究室というのが、工業化学・合成化学科の十数研究室ある中の 唯一、化学工学の研究室で、そこを選んだのが、化学工学との付き合いはじめである。
 その研究室では、当時、パラメトロン真空管を使った電子計算機を利用して、蒸留計算法の研究をしていて、筆者も 蒸留という単位操作を、計算手法という面からアプローチした。
 当時の電子計算機の能力というのは、現在2016年のパソコンと比べると桁違いに、速度が遅く、メモリも少ない。

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化学工学入門

 それはさておき、「化学工学」という科目の授業は、次元解析から始まって、単位操作と呼ばれる、 化学機械装置の基本設計をするための知識を習得することを、ある面で目的としていた。
 化学工学協会編(1970年台後半では化学工学会ではなく、化学工学協会といっていた)の、「初歩化学工学」3) という、入門書には、第1章 化学工学の基礎として、次元解析や理想気体、平衡関係、物質・エネルギー収支を取り上げ、 第2章以降に、単位操作として、以下の操作を詳述している。

 この単位操作の中には反応に関わる記述がほとんどなく、化学平衡、物質収支、エネルギー収支の ところで、反応の前後での保存則を解説する程度しかない。
 当時のほぼ「バイブル」と呼ばれた教科書ですら、反応工学とか反応器設計とかの記述がほとんど見られない。

 ちょっと脇道にそれるけれども、当時の化学工学のバイブルと言われる図書を紹介すると、

 これらが代表的な化学工学の当時のバイブルと言われる図書で、筆者の書棚に現存している。現存しているけど、 もう、めったに開かない。

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反応工学の特殊性

 ここで、なぜ反応操作が単位操作の教科書に現れないのかを考えてみると、その最大の理由は、化学反応にはいろいろな種類があって、最終製品に 至るまでの合成ルートにもいろいろなルートがあって、画一的に取り扱うことが難しい。
 例えば、蒸留操作を見ると、多成分の混合物を蒸発と凝縮を繰り返し、成分を分離するという操作であって、成分がどんなものであろうと、その 蒸気圧が既知であれば、ある程度の蒸留塔の設計(理論段を決めたり、塔径など寸法を決めること)ができてしまう。
 一方、化学反応を相別に見ると、気相、液相、固相の各反応や、二相以上にまたがる反応などがあり、画一的に取り扱えない。 また、固体触媒を利用するときには、その性状(比表面積、粒径、空隙率など)により反応が大きく影響を受ける。
 反応の種類も、酸・アルカリの中和反応から、分解反応、燃焼反応、重合反応、不均化反応、エステル化反応などなど、枚挙に暇がない。

 こうした理由から、反応ひとつ毎に、あるいは同種の反応毎に、反応器を設計せざるを得ない。装置設計という意味から、 反応器の設計は一品一様の設計となり、汎用的な、画一的な設計手法がそれほど存在しないといえる。
 そのため、反応器設計は単位操作の教科書にふさわしくないと考えられたのかも知れぬ。

 化学プロセスの開発は、反応器の開発に直結しており、プロセスの開発者はそのプロセスのライセンサー の立場になる。反応工程以前の、原料工程とか、反応工程以降の分離工程、精製工程などは、単純な単位操作のみ であり、装置設計は教科書にある単位操作の知見で十分設計できる。
 ライセンサーが、自社開発した化学プロセスのプラントを、他社に建てる場合には、ライセンス売りといって、 特許使用権を売って、その設計図書(基本設計図書)を売り渡すことをする。他社(ライセンシーという)は、購入した 基本設計図書から、さらに詳細設計を実施し、現実の化学プラントを建設するまでを行い。詳細設計以降からプラント建設、試運転 まで、ライセンシー自身で行うこともあるが、エンジニアリング会社などに支援を求めることもある。

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プラント建設までの道筋

 反応工学については、別ページ技術計算:反応工学で紹介している。また、化学プロセスの開発のステップとして、 ラボスケール、ベンチ・パイロットスケールのテストを経て、商業化プラントまでの開発ステップを同じく技術計算:反応工学で紹介している。

 ここでは、ごく大雑把に、プラント建設までの道筋を紹介する。
 プラントを建設する上で、まず、設計基本(Design Basis)を決める。設計基本とは、製品であるプロダクトを年産何トン必要なのか、 製品純度はどれほどか、年間操業時間は何時間であるか、利用できる用役(電気、水、スチーム、窒素など)の条件、工場の立地場所、 工場のレイアウト、適用法規など、設計に必要な前提条件を指す。

 プラントを構成する装置機械を設計するために、まずはじめに、それぞれの基本的な性能を決める。

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単位操作

 上に掲げた10個ばかりのこれら単位操作の言葉を眺めてみると、いずれも化学プラントを構成する機械装置であることが容易に 理解されよう。これら言葉の最後に「機」とか「器」をくっつけると、物理的な実体をもつ装置を表している。
 蒸留、吸収、抽出は、「塔(タワー)」をくっつけた方が一般的である。いわゆるこれら装置の見た目が細長い縦型の塔に似ている ことからくる。

 化学プラントをはじめとし、一般的にプラントとは、複数の機械・装置を組み合わせた、工業規模で、断続的および連続的に、繰り返しもの(製品)を製造・処理する機械装置群をいう。 実験室の試験装置などは、通常、プラントとは呼ばない。また一時限り、一回限りのものの製造でもプラントとは呼ばない。

 プロセスフロー(Process Flow)とは、出発物質である物質(原料)が、化学反応(反応器)を含む、単位操作機器を経て、最終製品となるまでの経路を表したフロー を言う。主要な機器を繋いだ、メイン配管や重要な配管、重要な制御系を表示したプロセスフロー図もあるが、全配管、バルブ、計器、制御系などを含めた詳細なプロセスフロー図もある。 前者を、Process Flow Diagram (PFD)といい、後者をPiping and Instruments Diagram(P&I、ピーアイ)という。
 プロセスフロー図は、まさに単位操作の連続と言える。水素・合成ガスプロセスフロー図のサンプルを以下に示す。

図1:プロセスフロー図の例7)

 上のプロセスフロー図で原料炭化水素と純粋とがプロセスへ入り、脱硫器、スチームリフォーマー、CO転化器の3つの反応器を経由し、PSA装置で製品水素の精製をし、系外へ払い出している。 この間、熱交換器、ポンプ、圧縮機、ブロワー、気液分離器(セパレーター、ドラム)を通って、反応以外の単位操作を経由している。

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計算化学工学

 「計算化学工学」という分野があるのかどうか筆者は知らないが、ここでは計算機(コンピュータ)を利用する化学工学と定義する。計算機を利用するといっても、 プラント制御用のDCS(分散制御システム)のような制御系での利用ではなく、 あくまでも技術計算機能を利用するという意味である。
 もっと具体的には、ある技術計算を実行するために、コード(プログラム)を書いて、実行したり、実行可能なプログラムを利用して、結果を得ることなど指す。

 Aspen PlusとかPRO/IIなどの市販のプロセスシミュレータもあって、単位操作機器の設計のベースとなる計算をこれらシミュレータがやってくれる。
例えば、蒸留塔の計算とか、気液平衡、液液平衡などはこれらシミュレータの得意とするところである。
 プロセスフロー図にある、単位操作機器をこれらプロセスシミュレータで計算させることにより、物質収支とか熱収支が容易に得ることができる。

 一方、プロセスシミュレータの不得意なところは、化学反応を扱う反応器の設計分野である。前述した反応工学 の特殊性から、統一原理がほとんどなく、シミュレータ開発元には反応の知識・知見がまったくない。そのため、汎用の プロセスシミュレータでは、反応器の設計が不得意分野として残る。
 反応に関わる知識、知見があるのは、プロセス開発を実施した製造企業にあって、これら知識をもとに反応器の設計思想を確立している。 いわゆるライセンサーとしての知見があって、プロセスオーナーと言われる所以である。

 筆者が、以前所属していたエンジニアリング企業で、取り組んでいた課題は、プロセスオーナー側に立って、プロセス開発を 計算技術面からサポート支援することであった。このサイトの情報ライブラリは、主に計算機を利用したプロセス開発支援を目指している。

 もっと手軽に、一般のプロセスエンジニアが利用する計算機ソフトとして、MS-Excelがある。ほとんどのエンジニアの日常業務はExcelを利用して、 何らかの技術計算、あるいはドキュメント作りを行っているのではなかろうか。
 単位操作の計算を、「Excelで気軽に…」といったシリーズものがあって、紹介しているようだ。筆者は生憎手元に持っておらず、以前図書室で見た記憶がある。

 ただMS-Excelの計算機能には限界があって、高速な演算を必要とする場合とか、大容量のメモリを必要とする場合とか、四則演算以外にVBA独特の文法やVBA自体のマニュアルが不親切とか があって、使い辛い面がある。筆者は大学生のころから、Fortranによるプログラミングに馴染んできたことから、コードを作ることにはそれほど抵抗がなく、それ以来、ちょっとした計算から大規模な計算まで プログラミングしていた。
 大規模演算以外の単位操作計算程度では、MS-Excelの手軽さと、プログラミングによる高速性(Dynamic Linkage Library利用)とを統合した環境が、化学工学分野では 一番いい組合せではないかとも思う。
 DLLを利用したMS-Excelとの組み合わせ利用については、計算機:VBAとDLLとの連携のページを参照されたい。

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無次元数とスケールアップ

 次元・単位系の話は、別ページの技術計算:物理・化学でも述べた。
 ここでは、学問分野としての、化学工学で利用する無次元数について述べる。

無次元数

 前述したように単位操作を行う機器・装置を設計するときに、設計基準となるのが無次元数という、次元をもたない値を基準とすることが多い。
例えば、装置内の流動状態を判別するために、レイノルズ数という無次元数を利用する。
 円形断面をもつ配管内を流れる流体のレイノルズ数は、次式で定義される。 \[ {\rm Re} = \frac{Du\rho}{\mu} \tag{1} \] ここで、\(D\)は配管の直径[m]、\(u\)は流体の流速[m/s]、\(\rho\)は流体の密度[kg/m3]、\(\mu\)は流体の粘度[kg/m/s]である。[ ]内はMKS系で示す単位である。 上式の、分子分母ともに、次元は[kg/m/s]となっており、レイノルズ数\({\rm Re}\)の次元は、分子分母等しく、[-]となり、次元を持たない。故に、レイノルズ数を無次元数という。

 管内流速を速くすることで、流れの状態が、層流、遷移状態、乱流へと変化してゆく。流動状態とレイノルズ数は密接な関係がある。また管内流の圧力損失も レイノルズ数と関連づけられていて、摩擦損失係数としてチャート化され、圧力損失の推算に利用されている。
 このようにレイノルズ数に限らず、化学工学では無次元数を用いて、いろいろな現象を相関することで、チャート化したり、相関式を作ったりしている。
 無次元数を利用するサンプルとして、混合拡散係数の相関の例を、技術計算:反応工学の図16および図17に示す。

 化学工学でよく利用される無次元数の、ほんの一例を表1に掲げる。これら無次元数を使い、設計に必要なパラメータ類が、実験データから相関式として報告されている。

表1:単位操作で良く利用される無次元数
無次元数 説明
\( \displaystyle {\rm Re}=\frac{Du\rho}{\mu} \) レイノルズ数
\( \displaystyle {\rm Re}=\frac{nd^2\rho}{\mu} \) 撹拌レイノルズ数
\( \displaystyle {\rm Fr}=\frac {u^2}{gD} \) フルード数
\( \displaystyle {\rm Nu}= \frac {hD}{\lambda} \) ヌッセルト数
\( \displaystyle {\rm Pr}=\frac {\mu c_p}{\lambda} \) プラントル数
\( \displaystyle {\rm Sc}=\frac {\rho {\rm D}}{\mu} \) シュミット数
\( \displaystyle {\rm We}=\frac {u^2\rho d_p}{\sigma} \) ウェーバー数

 前記した配管の摩擦損失係数\(f\)の相関式の例として、次の平滑管に対するBlasiusの式4)がある。 \[ f=0.0791{\rm Re}^{-1/4}, 3 \times 10^3 < {\rm Re} < 10^5 \tag{2} \] この式は、レイノルズ数が乱流のときの大まかな摩擦損失係数を得ることができる。通常、管の粗面度で相関される複雑な式から、収束計算で求めることをするが、Blasiusの式から求めた\(f\)値を初期値として 使うことができ、反復計算の高速化に役立つ。

 化学工学会編集の化学工学便覧4)には、無次元数を用いた相関式、実験式が各単位操作毎に数多く記載され、実際に設計現場で利用されている。

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スケールアップ

 化学工学という学問分野は、極論すれば、工業的スケールあるいは商業的スケールの化学プラントという化学機械装置を設計、建設、運転するため、 個々の装置をつなぎ合わせて、最終的な製品を製造する設備を創るための学問といえる。
 そのために、最初は試験管とかビーカーを使った、実験室規模の装置で試行錯誤して、その製造方法を確立することから始まる。 いわゆる、プロセス開発という段階からスタートする。

 プロセス開発で、もっとも重要な装置は言うまでもなく、反応装置である。反応装置内で供給原料が何らかの化学反応を起こし、製品もしくは中間体に化学変化する。
 原料と製品とは、分子構造が違っており、その物理的特性(物性)も当然異なる。
 例として、ポリスチレンの製造プロセスを見ると、反応器には原料となるスチレンモノマーが供給される。原料は常温常圧では液体で粘度は一般の炭化水素並みである。一方、 製品となるポリスチレンは、常温常圧では固体であって、スチレンと混合状態となる反応器内部では、液体で、混合物の粘度は数千センチポイズの高粘性流体となっている。

 プロセス開発においては、反応器の設計手法、すなわちスケールアップ手法を確立することが目標のひとつである。他の原料供給、分離精製などの後処理は通常の単位操作 が採用されることになるが、分離精製などの単位操作はすでにスケールアップ手法がほぼ確立されていて、新規にプロセス開発する場合にはよほど特殊な操作でない限り、開発対象とは なりにくい。

 反応器のスケールアップ手法は、技術計算:反応工学で取り上げているのでそちらを参照されたい。
 ここでは、単位操作関連の設計手法、スケールアップ手法について、特に技術計算面で特記すべく点で気付いたところを以下述べる。

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装置内の現象

 反応器をはじめとし、プラントを構成する各種単位操作機器を設計するためには、これら装置内での物理現象および化学現象を把握する必要がある。
 多くの単位操作機器の内部では、輸送現象、移動現象が含まれており、また単一相から気固液三相まで複数の相が共存する場合もあり、各相での物理・化学現象以外に、 これら相間での移動現象も機器設計上考慮する必要がある。
 機器内部の現象をどの程度まで解明すべきかは経験に寄るところが多いが、一般的には、化学工学便覧に記載された程度の知識でスケールアップは十分に行うことができそうである。 用いる物質や物性値が特殊であったり、非理想性をもっていたり、運転条件が極端であるときには、これら便覧に乗っている設計ツール、相関式では間に合わない可能性があり、独自に新しい相関式を創出する必要がある場面もある。

輸送現象

 気相および液相では、まとめて流体という言葉が利用され、主に輸送現象というのは流体輸送の現象を指す場合が多い。固体の場合では、輸送というときは特に固体輸送という。 粉体・流体の空気による空気輸送というのもあるが、これは流体を使った輸送に含められる。
 似た言葉に「流動」がある。これは言葉通り、流体自体が動くことを指し、主体が流体である。一方、輸送は主体が人である。
 流体輸送では通常、配管による輸送が大部分を占め、これに付属する機器として、ポンプ、圧縮機、ブロワーなどの単位操作機器がある。
 配管内を流れることから、配管内の摩擦による圧力損失などを考慮して、機器の設計をする。輸送の途中で温度・圧力の変化があれば、相変化を予想した設計が必要となる。 また流速が速いときには音とか振動の発生にも気を配る必要がある。

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物質・熱の移動現象

 装置設計する上で、質量、熱(エネルギー)、物質、運動量の移動など、装置内の移動現象を把握する必要がある。化学工学では 物質収支、熱収支、成分物質収支、圧力収支(圧力バランス)など、装置の出入口とか、任意に選んだ領域に着目して、収支をとる。
 これらの収支を、プラントの原料入口から製品出口まで、つなげて全体の収支をとることで、プラントの性能把握や設計の基礎となる。

 プラントの装置内部では、原料や製品が気固液のどれかのひとつの相、または2つ以上の相が共存していることもあり、 これらの、液液、気液、固液、固気の相間物質(熱)移動をも考慮する必要がある。この相間の物質移動速度が律速となるのか否かで、装置設計手法が 当然のことながら、異なってくる。
 また、ガスの化学吸収のように、ガスの物理吸収と化学反応のどちらが速いか遅いかでも、設計パラメータが違ってくる。

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流体力学

 装置内の流体の流動現象、特に三次元速度を解析的にまたは数値的に求めることをいう。流体力学では、少なくとも運動方程式(運動量収支式)を解くことにより、 解析領域内の速度場を求めることをいう。同時に、熱収支式や物質収支式を連立して解くこともある。
 流体力学では、支配方程式(例えばNavier-Stokes式など)を偏微分方程式で表し、解析領域内で適当な初期条件、境界条件を与えて、 解析領域内の任意の座標点の速度などを求める。三次元場であれば、三方向の速度成分が求まる。

 偏微分方程式を数値的に解くため、有限差分法、有限要素法、境界要素法などがある。そのほか、気象予報関連ではスペクトル法が流体解析に利用されているようである。
あいにく、筆者は境界要素法やスペクトル法については経験がないので、その詳細を語ることはできない。

 流体解析の詳しい話は、技術計算:流体解析を参照されたい。また、有限差分法については、 技術計算:有限差分法を、 境界要素法については、技術計算:有限要素法を参照されたい。

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個々の装置設計

 反応器設計を除き、個々の単位操作技術の装置設計について、計算技術との関わりを以下紹介したい。
【注】以下の章建てを考えていたけど、それぞれ記述すると長くなるので、適当に端折って以下述べたい。詳しくは、 改めて別ページに後日に、できれば紹介したい。

蒸留計算

 筆者が始めてコンピュータ(当時は電子計算機といっていた)に触れた、対象とする技術が蒸留計算であった。1973年の学部3年生から4年生に代わる頃のことである。
 当時の計算機は、パラメトロン真空管を使っていて、小教室一部屋くらいのところに鎮座していた。メモリは8000ワードであったと記憶している。そのため蒸留計算では3成分系で理論段20-30段の蒸留塔を解くのがやっとの時代であった。
 2016年現時点でのパーソナルコンピュータと比べ物にならないくらいの代物を使い、蒸留計算をしていたことになる。

 それはさておき、トレイ式の蒸留塔では、トレイ1段を気液接触装置と考え、下から上昇する蒸気と上から下降する液とがトレイ上で完全混合し、気液平衡に達した 気液のうち、蒸気が上の段へ、液が下の段に流れる。こうしたトレイ1段分を理論段とし、理論段分の数のトレイを上から下まで繋げて、沸点の低い(軽い)成分を上に、 沸点の高い(重い)成分を下に移動させ、成分毎に分離する装置となっている。

 第j段目の成分物質収支式(モルバランス)を数式で表すと、次式となる6)。 \[ \begin{align*} Lx_{j-1,i}+Vy_{j+1,i}=Lx_{j,i}+Vy_{j,i} \tag{3} \end{align*} \] ここで、\(L,V\)は液および蒸気のモル流量、\(x_{j,i},y_{j,i}\)は、j段上の成分iの液モル分率および 蒸気モル分率を示す。また塔頂を1段目と下方向に数えるとする。  また、各段が沸点の液で気液平衡にあるとすると、各段の温度は、沸点の制限から \[ \begin{align*} y_{j,i} =K_{j,i}x_{j,i} \tag{4} \\ \sum_i K_{j,i}x_{j,i} =1 \tag{5} \end{align*} \] で決まる。ここで、\(K_{i,j}\)は平衡定数またはK-Valueと呼ばれ、理想系であれば蒸気圧と全圧から計算される。
 式の形をみると、差分方程式の形をしており、連立して解くことができる。ただし、 温度に関しては非線形(蒸気圧は温度に対し非線形ゆえ)であり、全体として収束計算となる。

 塔頂のコンデンサー(凝縮器)とか塔底のりボイラー、原料供給段はそれぞれ成分収支式を建てる必要がある。

 以上の技術計算では、原料組成、供給量、理論段などを与え、どのように分離されるかを計算する方法であり、 操作型解法と言われる。逆に、分離仕様を与え、理論段を求めることを設計型解法という。
 現在の蒸留計算の主流は操作型解法であり、プロセスシミュレータと言われる市販のソフトには標準で備わっている。 したがって、エンジニアが自作することはめったにない。余程、収束性が悪いとか、他の操作を蒸留操作に持ち込む場合以外は 自ら作ることはしない。

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吸収塔の設計計算

 吸収塔では、ガス中の回収成分を吸収液と接触させて、有用成分を回収する装置である。通常、充填塔など充填物を詰めた塔状の装置が利用される。 吸収塔では、塔底からガスが供給され、塔頂から吸収液が供給され、向流接触し、塔底から吸収液、塔頂から排ガスが排出される。

 充填塔のある部分をモデル化すると、流れ方向の微分方程式で表すことができる。したがって微分方程式を解くときに差分近似を適用すれば、 差分方程式となる。これは蒸留計算とまったく同じ式の形をしていることになる。

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熱交換器の設計計算

 化学プラントでよく利用される機器として、熱交換器がある。流体を加熱したり、冷却したりする装置で、いろいろな形式のものがある。 シェル&チューブ式、二重管式、スパイラル式、プレート式などがあり、それぞれ特徴がある。
 設計ベースとして、流体を何℃に加熱・冷却したいのか、その流量と出入口の温度、圧力をデータシートに記述する。 また、入口から出口にかけて温度変化に伴い、相変化があるときにはその情報も必要となる。
 こうした設計ベースから、伝熱計算を行って、総括の伝熱係数、伝熱面積、熱交換器のタイプ・サイズを決める。 伝熱計算を行う専門のソフトウェアがあって、シェル側、チューブ側などの局所伝熱係数の計算から総括伝熱係数の計算まで ほぼ自動的に実行してくれる。

 専門のソフトウェアが手元になく、伝熱計算を自分で行うため、尾花著「熱交換器ハンドブック」5)というバイブル図書があって、 計算例があり、数多くの相関式やチャートが記載されていて便利である。

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参考図書ほか

 本ページを記述するに当たり、以下の図書・文献、サイトを利用しました。

は、ここで取り扱っています。

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